研究開発[研究開発領域]
インクジェット用紙/イメージング材料
インクジェット用紙
写真用インクジェット用紙を超えて
当社は写真用インクジェット用紙のリーディングカンパニーとして、写真用やラベル用等100種類を優に超えるインクジェット用紙を開発してきました。それらの製品は、量販店に並ぶカラフルなパッケージに包まれたインクジェット写真用紙として、皆様にお使いいただいております。
インクジェット技術は画像を出力するという基本的なところから、電子回路の印刷や、ディスプレイ部品の印刷、3Dプリンターへの応用、細胞の印刷など、応用範囲が大きく広がっています。これは必要なものを必要なところだけに付与するという、環境に優しく時代に即した技術だからです。当社は資源や環境の保護を常に考え、さらにその先を目指すインクジェット用紙の研究・開発を続けています。
基本は多孔質と光の制御
インクジェット用紙は、紙やRCペーパー、フィルムの上にインク吸収層を塗布して作ります。インク吸収層はプリンタヘッドが打ち出す数ピコリットルの無数の液滴を瞬時に正確に吸収し、その位置にしっかりと固定します。 インクジェット用紙の表面に穴などは無いように見えますが、ウイルスよりはるかに小さい1mmの数万分の1の穴を無数に有するスポンジ様の多孔質構造をしているのです。また光の波長よりはるかに小さい10nm程度の無機超微粒子から作られているため透明になり、インクの美しい色をそのまま再現する事ができるのです。
最高級グレードの写真用インクジェット用紙は、他グレードの用紙にはない、非常に高い光沢を持っているものがあります。この高い光沢は当社独自の超精密多層塗布技術を用い、世界にも類を見ない”光学薄膜”を表面に設け、光の反射率を制御するという技術を用いて実現しています。この様に、インクジェット用紙は、無機微粒子を分散する技術、バインダーの技術、インクに含まれる染料や顔料を固定する技術、人が好ましく思える面質を作る技術、インク吸収速度を制御する技術、インクの色あせを抑制する技術、光の反射率を制御する技術等、さまざまな技術からなりたっています。
新しいインクジェット用紙
さらにその先を目指すために、お客様からのさまざまな要望や、資源保護や環境保護、安全・安心など様々な観点から新たなインクジェット用紙を開発しています。
例えば、ラベル用インクジェット用紙もその一つです。ラベル市場は、食品用途や医療用途等様々な用途で高い成長率が見込まれております。その中でインクジェット方式でのラベルも小ロット多品種の傾向や効率化の流れもあり、今後の成長が期待されております。当社では、これまで写真用インクジェット用紙で培ってきた技術を生かし、様々な質感(光沢やマット調など)や基材(紙、PP、PETなど)の製品を取り揃え、さらに品質面においては、耐水性や耐アルコール性等の品質を持ち合わせた製品をラインアップしており、用途に見合った製品を選択できるようにしております。またリサイクルPET品の使用や紙基材で耐水性を持たせるなど、環境にも配慮した製品群となっております。
多孔質技術の応用
インクジェット用紙の基本である多孔質を作り上げる技術は、画像の印刷だけにはとどまらず、布帛に模様をつける染色や、印刷で電子回路をつくるプリンテッドエレクトロニクスにも応用されています。これは、多孔質が画像を作る染料インクや顔料インクだけではなく、染色に用いられる昇華インクや、プリンテッドエレクトロニクスに用いられる銀ナノインクとも非常に相性が良いためです。
昇華転写紙とは昇華インクに特化したインクジェット用紙のことで、多孔質を応用することにより昇華インクを印刷した後の乾燥時間を大幅に短縮することができるようになり、布帛の生産性が大きく向上しました。昇華転写紙に印刷しポリエステル布等の布帛と重ね、熱と圧力を加えることで絵柄を転写することができます。ネクタイ、様々なトップやボトム、スポーツアパレル、ユニフォーム等の製造に広く用いられています。
転写インクジェット用紙は銀ナノインクで作られた回路を転写するためのプリンテッドエレクトロニクス用の新しい用紙です。多孔質の上に数100nmの非常に薄い剥がれやすい層を形成しています。プロトタイピングや教育での利用が見込まれています。多孔質は吸収するという特性だけではなく、保持する、放出する、連続細孔を有する、ナノスケールの細孔を持つ、光透過性を制御する等の機能を持っています。これからも機能を生かした従来にない製品の開発を続けてまいります。
イメージング材料
銀塩感熱フィルム
写真用印画紙、銀塩印刷版、感熱記録紙で培った銀塩材料技術と感熱材料技術を融合させ、薬液による現像処理が一切不要な、完全プロセスレス銀塩感熱フィルムの開発に取り組んでいます。一般的なグラフィックアーツ用の銀塩フィルムでは、黒化画像を得るために現像液によるwet処理プロセスが必要とされますが、本技術では熱エネルギーを与えるだけでUV領域でも高い光学濃度を持つ金属銀画像をその場で形成することが可能です。
レーザー描画に対応し高解像度を実現したサーマルレーザー製版用フィルム「TRF-IR830」は、一段と高品質なスリーン印刷版、フレキソ印刷版作成を可能とします。一般的な焼き飛ばしタイプのレーザー描画フィルムのような粉塵発生がなく、プロセスレスと合わせ環境に優しいフィルムです。